A24こんにちは、ギター歴30年A24(@a24guitarblog)です。
「一生懸命弾いたギターなのに、録音して聴いてみると何かショボい…」 「ミックスでカッコよくしようとしたら、どんどん音が不自然になってしまった…」
宅録(ホームレコーディング)を楽しむ多くのギタリストが、一度はこうした壁にぶつかります。DAWが進化した現代、プラグイン一つで魔法のように音が良くなると思いがちですが、現実はそう甘くありません。
ギターのミックスは「録音ボタンを押す前」に決まる
「理想的な音を追求するのなら、録音の時点から音にこだわる」。これは、ミックスにおいて最も重要で、絶対に妥協してはいけない本質です。
なぜ「後で直す」が通用しないのか?(加工と素材の違い)
「録音の質をミックスで上げればいいや」という考えは、百害あって一利なしです。なぜなら、ミックスとは「良い素材の良さを引き出す」作業であり、「悪い素材を良くする」作業ではないからです。
例えば、録音された音に「芯」がなかったとします。 ミックスで存在感を出そうとEQ(イコライザー)でハイ(高域)をブーストしても、元々に芯がなければ、ただノイズが目立つだけの「痛い音」になるだけです。加工はあくまで加工。加工した音の向こう側に、元の素材の悪さが透けて見えてしまいます。
理想のエフェクト処理は「最低限」であるべき理由
最低限のエフェクト処理で最高の音が奏でられる状態が、なぜ理想なのか。それは、エフェクトをかければかけるほど、元の音源が持つ「弦の振動」や「木の鳴り」といった、演奏のリアリティ(鮮度)が失われていくからです。
録音作業は確かに手間がかかりますが、そこで全力を注ぐことで、出来上がりの差は歴然となります。まずは「録音段階でミックスの必要がないくらいの音を作る」気持ちで臨みましょう。
神テイクを導く!録音時の注意点とギタリストの心得
では、具体的に録音時に何を注意すべきか。技術的な側面と、プレイヤーとしての精神面の両方から解説します。
機材・環境編:ノイズと信号劣化との戦い
ギターの信号はとても繊細です。
- シールドの長さにも気を遣う:
- 理由: ギターのパッシブピックアップから出る信号はインピーダンスが高く、ノイズを拾いやすく、かつ長い距離を移動すると高域から劣化していきます。シールドが長ければ長いほど、オーディオインターフェイスに届くまでに音がこもってしまうのです。
- 解決法: 宅録であれば、必要最低限の長さ(例えば3mや5m)の高品質なシールドを使いましょう。
- 電源ノイズを回避する:
- 理由: 電源コード(ACケーブル)とシールド・コードが平行に絡んでいると、電源のACノイズ(ハムノイズ)がシールドに飛び込み、録音音源に「ブーン」というノイズが乗ってしまいます。
- 解決法: シールドと電源コードは可能な限り離し、どうしても交差する場合は直角に交差させるようにしましょう。
プレイヤー編:演奏のニュアンスを最大限に引き出す
ギタリストとしてのモチベーションと演奏の質は、音質に直結します。
- 弦は新品に張り替えよう!:
- 理由(音質): 新品の弦は音が煌びやかでサステインも伸び、コード感もクリアになります。
- 理由(感覚): プロ視点で付け加えるなら、「プレイアビリティ(演奏性)」の向上が大きいです。
古い弦は錆びて指に引っかかり、チョーキングやスライドのニュアンスが微妙に犠牲になります。
新品の弦の「指に吸い付くような感覚」が、より感情豊かな演奏を導いてくれるのです。
- 「まぁいいや」は厳禁。PCが許す限りテイクを重ねる:
- 「後で編集すればいいや」という場しのぎは、ミックス時のめんどくさい作業(そして納得いかない結果)を招きます。こだわりを持って、納得いくまで何度でも録音することをおすすめします。
- ミステイクはすぐに消さない勇気:
- 間違えたテイクでも、例えばソロの終わりの「ピッキングノイズ」だけが奇跡的にカッコよかったり、予期せぬフィードバックが楽曲にハマったりすることがあります。残しておいて、最終的に使わないなら削除するようにしましょう。
アンプ派?シミュレーター派?それぞれの録音アプローチ
ギターをどうやってDAWに取り込むか。大きく2つの方法があります。
1. ギターアンプ+マイク録音:空気感を含む理想の音
自宅やスタジオで、お気に入りのアンプとマイクで音を作る、ギタリストにとっての「理想」です。 しかし、マイクの立て方(マイキング)一つで音が激変するため、難易度は高めです。
アンプやマイクの特性を理解しているエンジニアさんがいないと、録音にすごく時間がかかってしまいます。自分で決めた音がすぐに出せるよう、日々精進しましょう。
2. ギターアンプシミュレーターで録音:現代の主流
昨今では非常に優秀なシミュレーター(Positive Grid BIAS AMPなど)があり、使い勝手も良く、耳で聞いた限りではプロでも判別が難しいレベルになっています。宅録においてはこの利便性は正義です。
迷いをなくし演奏に集中する「録音プラン」の立て方
自分で録音してミックスまでを行うと、演奏・エンジニアリングの両方を一人でこなさなければならず、集中力が切れて時間ばかりが過ぎてしまいます。
ここで、録音を始める前に「録音・ミックスプラン」を作成し、生産性を上げましょう。
【実践】録音前に決定しておくべき「チェックリスト」
スプレッドシートやメモ帳に、以下の項目を事前にリスト化しておきましょう。
- □ 曲を通した音のイメージ: Aメロはオーバードライブ、Bメロはディストーション、サビはクリーンアルペジオを追加…など。
- □ 「かけ撮り」か「後掛け」か: 演奏時にモチベーションが上がるエフェクト(例えばコンプレッサーやワウ)は「かけ撮り」し、空間系はミックスで「後掛け」するなど、パートごとに決めてメモする。
- □ 使用する楽器: バッキングはストラト、ソロはレスポールなど。
- □ 録音の順番: どのパートから録るか。
- □ ステレオ処理: バッキングをステレオにするため、LとR用に**「別撮り(ダブル)」**で録音するか。
- □ 編集方針: 1番のバッキングを2番にコピーして使うか、2番も別で録るか。
基本的なことばかりですが、計画を立てる時間を作った方が、結果として作業効率は劇的に良くなります。
ギターを楽曲になじませ、存在感を出すミックステクニック
ここからは、こだわって録音された「最高の素材」を仕上げるミックスの話です。
ミックスを始める前に、ボーカル編でも記載した「ゲインステージング(適量な音量調節)」をやっておくのを忘れずに!
1. コンプレッサーで存在感を整える(H-Compの魅力)
コンプレッサーは単に音量を整えるだけでなく、「音のキャラ(存在感)」を作るエフェクターです。
- おすすめ: WavesのH-Comp。音が太くなるので存在感が出ます!アナログとデジタルの良いとこどりを実現したハイブリッドコンプで、パラレルコンプ(原音とコンプ音のミックス)もこれ一つで設定可能です。
2. ダブリング効果で壁のような厚みを作る
バッキングギターなどで、全く同じフレーズを2回録音し、それぞれをL(左)とR(右)に振り切ることで、1本のギターでは得られない、壁のような厚みを生み出す効果です。
3. BPMから導き出すディレイタイムで深みを出す
ディレイタイムを曲のBPM(テンポ)に同期させるのは、現代のミックスの基本です。2分音符から32分音符まで、BPMから算出したディレイタイムのシートを用意しておくと、空間の奥行きを演出する参考値として非常に便利です。

4. 空間系処理(リバーブ)で全体を馴染ませるセオリー
リバーブは音を響かせるだけでなく、楽曲全体を同じ空間に馴染ませるために使います。 セオリーとして、「リバーブはドラムのスネアのもの(ルームリバーブなど)をギターにも共有する(センド&リターンで送る)」という方法があります。これで、ドラムとギターが同じ部屋で鳴っているような一体感が生まれます。
5. ネガティブEQで音質を磨く(美味しい帯域の見極め方)
さて、ここがミックスで最も重要、かつ失敗しやすいセクションです。原案にある「ネガティブEQ(不要な周波数をカット)」は、プロの現場でも鉄則です。
EQは諸刃の剣。ブーストしすぎると位相がおかしくなり、音がスカスカになったりします。要らない周波数はハイパス・ローパスフィルターでしっかりカットしましょう。

ギターの美味しい帯域を見極めるために、以下の目安を参考にしてください。
- 低音域(〜100Hz): ベースやバスドラムの領域です。ギターのこの帯域は「濁り」の原因になるので、
ハイパスフィルターで思い切ってカットしましょう(100Hz〜200Hz付近までカットする場合もあります)。 - 高音域(8kHz〜12kHz): ギターの美味しいきらめきはありますが、同時に「痛さ」や「シー」というノイズの領域でもあります。
ローパスフィルター、またはシェルビングEQで適切に処理し、全体の馴染みを良くしましょう。 - 中音域(200Hz〜4kHz): ここがギターの「命」の帯域です。ここをブースト・カットすることで、太さや輪郭を調整します。
まとめ:こだわりの録音で、最高のギターサウンドを
「ギターの録音・ミックスは録音がすべて」。 この本質が、少しでも伝わったでしょうか?
確かに録音は手間がかかります。プランを立てるのもめんどくさいかもしれません。しかし、その「ひと手間」が、ミックスを劇的に楽にし、最終的な音源のクオリティをプロレベルに引き上げる唯一の道なのです。
まずは次の録音で、弦を張り替え、シールドの長さにこだわり、納得いくまでテイクを重ねてみてください。 その時、あなたのDAWから流れてくる音は、これまでにない熱量とリアリティを持って、心に響くはずです。
よし、やってみよう!と思ったその瞬間が、最高の音への始まりです。楽器とDAWに向き合う時間が、あなたにとってこれまで以上に素晴らしいものになりますように!
今回の記事はここまでです。ご意見や質問はコメント欄でどうぞ! ありがとうございました。
ではまたっ!



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